道元禅師示衆    Ver 1.0





この一日はおしむべきの重宝なり 静かに思うべし。
一生百歳のうちの一日は ひとたび失わん ふたたび得ることなからん
いずれの善巧方便ありてか 過ぎにし一日をふたたび帰したる。


道を得ることは根の利鈍には依らず ただ精進と懈怠とに依るべし。
志の到らざるは無常を思わざるによるなり。
念々に死去す 畢竟しばらくも留まらず。
しばらくも存ぜる間 時光を虚しく過ごすことなかれ。


今夜死し 明日死ぬことと思い あさましきことに逢いたる思いを作して
切にはげまし 志をすすむれば さとりを得ずと云うことはなき也。
中中 世智弁聡なるよりも 鈍根なる様にて 切なる志しを発する人 速やかに悟りを得る也。
只今ばかり我が命は存する也。
死せざる先に悟りを得んと思ひて仏法を学せんに 一人も得ざるは有るべからず也。


時 人を待たず、光陰 惜しむべし。
古より有道の人、国城 男女 七宝 百物を惜しまず。
唯 光陰のみ、之を惜しむ。


道を学ぶには志を専らならしむること真箇なれ。
若し是れ真箇ならば、道、すなわち徹する也。


ただ 仏道祖道を自己の身心にあひちかづけ あひいとなむを
よろこび のぞみ こころざすべし。
一時より一日におよび 乃至 一年より一生までの営みとすべし。





INDEX